商品知識編
エスプレッソマシンにおけるカテゴリー分け
エスプレッソマシンの種類はもちろんだが、見るポイントによってカテゴリーも多岐に渡る。
エスプレッソマシンのカテゴリー
- 抽出方法による違い
- 給水方法による違い
- ボイラーによる違い
- 温度制御による違い
- ポンプによる違い
- 電源による違い
大きく分けると6種に分かれる。
各違いを理解し、お客様に提案する必要がある。
抽出方法による違い
- レバースイッチ式
- マニュアル式
- メモリースイッチ式
- ピストンレバー式
- パドル式
レバースイッチ式
アパルタメント・ジオット等。タンク式のE61ヘッドの場合は、ほぼこの仕様。
レバー可動部の裏側にスイッチがあり、そこをレバーに押されて動く仕組み。
レバーを引き上げている間は抽出オン、下げると抽出オフになる。
慣れていないと同時スチームをする難易度が高いが、「ちゃんとやっている感」は出る。
マニュアル式
アッピア2 S等。
スイッチを押すと抽出オン、もう一度押すもしくは反対側に押すと抽出オフになる。
メモリースイッチと比べ、少し安く売られているケースが多い。
形状はパドル式だが、リネアミニもこの仕組み。
メモリースイッチ式
IB7・ゾエ等。水道直結式は、ほぼこの仕様。
各ボタンごとに、抽出量の設定が可能。
フローメーターの回転数で計算しているため、メッシュによって若干前後する場合がある。
アルバイトが多いお店や慣れていない方には、メモリースイッチ式をオススメする方が良い。
ピストンレバー式
ボスコ・アテナ等。エスプレッソマシンの原型のため、イタリアンやピッツェリアに人気。
電子部品が少ないため故障率も低いが、バックフラッシュが構造上できないため(※)ガスケット交換を頻繁にオススメする。
シリンダー内に大型のバネが入っており、レバーを手前に引くとバネを曲げながらシリンダー内にお湯が入り、上に戻すとバネが戻りながら抽出される。
シリンダー内のお湯量に決まりがあるため、抽出量を増やすことはできず、リストレットはカップを取り除く以外方法はない。
※:厳密にいうと圧を抜く際のコーヒー液が通る三方弁がないため、バックフラッシュをする必要がない。
パドル式
ストラーダEP・R9one等。ロースタリー向け。
パドルの位置によって、抽出圧をリアルタイムで変えることができる。
設定するバリスタの知識・技術力が試されるのと、多様な豆の種類を扱っていないと意味がないため、あまりオススメする店舗はない。
給水方法による違い
- タンク式
- 切り替え式
- 水道直結式
タンク式
アパルタメント等。設置費がいらないので、安く済ませられる。
バイブレーションポンプを搭載していることが多いので、1日20杯程度とあまり杯数を淹れる店舗向きではない。
バーや、テイクアウトをしないドリップと併用する店舗向け。
メリット | デメリット |
1日20杯程度の店舗で使用可能。 設置費がいらないので初期投資が抑えられる。 コンパクトなので置き場所に困らない。 100V15Aコンセントで使用できる。 | 1日20杯以上の店舗や野外出店にはオススメできない。 ボイラーが小さいのでスチームはそこまで強くない。 |
タンク/水道直結切り替え式
ジオット・シンクロニカ等。ロータリーポンプを積んでいるものは基本的に可能。
タンク式として使用する場合は、設置工事が必要ないので、初期費用を抑えることができる。主に100V15Aなので電気工事も必要ない。
水道直結式として使用する場合は、別途設置工事が必要。マルシェ等に持っていく場合は毎回自分で取り外さないといけない。
ロータリーポンプなので1日50杯程度であれば問題ないが、水道直結式にしても水を補給する手間が減るだけで、スペックは変わらない。
給水スイッチによって切り替えているため、使い分ける場合は内部のスイッチを切り替える。
リネアミニやアッピア2は、別途セットが必要なので購入時にメーカーに指示する必要がある(費用も別途かかる)。
メリット | デメリット |
1日50杯程度の店舗で使用可能。 タンクで使用する場合は、設置費がいらないので初期投資が抑えられる。 コンパクトなので置き場所に困らない。 100V15Aコンセントで使用でき、野外でも使用できる。 | 1日50杯以上の店舗には導入できない。 ボイラーが小さいのでスチームはそこまで強くない。 水道直結で使用する場合は、別途工事が必要。 重いので持ち運びにくい。 |
水道直結式
200V系はほぼすべて水道直結式。
浄水器を含めた設置工事が必要。大型のため配送料も高い。
タンク式よりもボイラーが大きいため、持続的なスチームが可能。
ほぼメモリースイッチ式なので、慣れていないスタッフが多い店舗に向いている。
メリット | デメリット |
1日50杯以上の店舗に導入可能。 ボイラーが大きいため、持続的なスチームが可能。 抽出量の設定ができるため、アルバイトが多い店舗にも提案しやすい。 特殊事例として、タンクで吸い上げることも可能。 | 設置工事が必要。 水道・電気工事が必要。 スペースがある程度ないと置けない。 |
ボイラーによる違い
- ワンボイラー
- ヒートエクスチェンジャー(HX)
- ダブルボイラー
- マルチボイラー
抽出用のお湯を温めている場所
- 抽出ボイラー
- コーヒーボイラー
スチーム・ホットウォーター用のお湯を温めている場所
- スチ-ムボイラー
- メインボイラー
とも呼ぶ。
ワンボイラー
シルビア等。数万円ぐらいの家庭用エスプレッソマシンはほぼこの仕様。追い炊き式・シングルボイラーとも呼ばれる。
ボイラーが1つしかないため、スチームと抽出は同時にできない。
スチームをする場合は追い炊きして高温にする必要がある。
高温のときに抽出すると抽出口から蒸気しか出ない。抽出温度のときにスチームをするとホットウォーターが出てくる。
作りもあまりシッカリしていないため、1日数杯が限度。
ヒートエクスチェンジャー(HX)
アパルタメント・ジオット・IB7・ゾエ等。HX機・熱交換式とも呼ばれる。
スチームボイラーにヒートエクスチェンジャー(コーヒー抽出用のお湯が入っている筒)が刺さっていて、湯煎されているイメージ。
スチームボイラーにのみヒーターが搭載されていて、抽出用のお湯が入る部分にはヒーターはない。
スチームボイラーに温度を合わせるため、間を置くと少し抽出温度が高くなる場合がある。
ダブルボイラー
エクスプレッションプロ・FB-80等。デュアルボイラーとも呼ばれる。
スチームボイラーとコーヒーボイラー(抽出ボイラー)が分かれていて、それぞれにヒーターが付いているため違う温度帯で設定することが可能。
一般的に、スチームがドライな場合が多い。
2連や3連の場合も、1連と同じく1つのコーヒーボイラーからお湯が供給される。
マルチボイラー
ヴェローナRS・カフェレーサー・ブラックイーグル等。
2連や3連のときに、ダブルボイラーと違いそれぞれの抽出口で温度設定が可能。
より細かい温度設定ができるため、現状ハイエンド機種はほぼこのボイラーを使用している。
ヴェローナRS等は上記のような通常のマルチボイラーだが、一部ハイエンド機種は温度を維持するシステムが少し違う。
シモネリのボイラー
アウレリア・ブラックイーグルはこの機構。
コーヒーラインの配管をヒーターで挟み、保温している。
温度維持には優れているが、配管の外側のため設定を下げたとき温度が冷めにくいデメリットがある。
サンレモのボイラー
カフェレーサー・オペラはこの機構。
プレヒーティングボイラーが別途あり、抽出グループにコーヒーボイラーが搭載しているため温度がブレない上に、設定を変えて温度を冷ます際も容易にできる。
温度制御方法による違い
- 圧力スイッチ
- PID制御
温度か圧力が既定の値に達したら、自動でヒーターがON・OFFになり温度を調節する。
現状、温度か圧力の2パターンのみ。
圧力スイッチ
プレッシャースイッチとも呼ぶ。
ボイラーの圧力で温度を計測しているため、温度管理はザックリ。1.2bar等、圧力で設定する。
厳密にいうと、温度ではなくボイラー内の空気圧力を測っているため、スチームボイラーのみ。
液体が満たされていると機能しないため、HXの場合はすべて圧力スイッチ。
PID制御
液体の温度で計測している。イメージ的には温度計。
PIDのほうが温度をより細かく設定することができる。
最新のものはほぼPIDで温度制御している。
カフェレーサーのスチームボイラーのみ、初期段階は圧力スイッチで、途中からPID制御に変わる。
ポンプによる違い
- バイブレーションポンプ
- ロータリーポンプ
水を吸い上げるポンプにより、壊れにくさや安定性が変わってくる。
バイブレーションポンプ
ソラノイドポンプとも呼ぶ。
ピストンで水を送り出している。安価なため小型のタンク式でよく使われている。
振動音が大きく、抽出圧の変更はできない(約11~13bar)。
ピストンの上下に電磁コイルがあり、電気を通して内部を高速で動かしている。
ポンプ自体の耐久度があまり高くないので、1日20杯以上淹れる店舗にはオススメしない。
ロータリーポンプ
モーターで水車を回して水を送り込んでいるイメージ。
in側の弁を調節することで、抽出圧を変動することが可能。
圧力の安定性や堅牢性に優れているので、味にこだわる店舗や杯数を多く淹れる店舗に向いている。
電源による違い
電気の基礎知識として、
- V(電圧:ボルト)
- A(電流:アンペア)
- W(電力:ワット)
がある。通常の家庭用コンセントは100V 15A 1500W。
当社で考える場合、計算するときは「W < ( V × A )」であれば問題ない。
100V
100Vは基本的に15Aか20Aを使用する。30Aを使用することは当社では現状ない。 100V×15A=1500なので、1500Wまで耐えられる15Aのコンセント。
例:1450Wの場合
100V×20A=2000なので、2000Wまで耐えられる20Aのコンセント。
例:1800Wの場合
200V
200Vは基本的に20Aか30Aを使用する。15Aを使用することは当社では現状ない。 200V×20A=4000なので、4000Wまで耐えられる20Aのコンセント。
例:3500Wの場合
200V×30A=6000なので、6000Wまで耐えられる30Aのコンセント。
例:5800Wの場合
三相(動力)
6000Wまでは基本的に単相100Vと単相200Vを使用するが、稀に6000Wを超えるマシンがある。
その場合は単相では対応できないので、三相もしくは動力と呼ばれる電気を使用する(三相は200Vのみ)。 三相200V×30A×√3(1.732)=なので、10392Wまで耐えられる30Aのコンセント。
例:8350Wの場合
単相と三相では電気会社との契約が違うため、お客様への注意喚起が必要。
コンセント形状一覧
VやAによって、コンセント形状がそれぞれ違う。
それ以外の形状では設置・使用することができないので、必ず事前にお客様へ設置案内図を送り確認をとる必要がある。
提案の仕方
公式サイトに業務用と家庭用それぞれ提案の仕方が書いているので参考にしてほしい。
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