ヴェネツイア
昨年10月、ベネツィアに出張した時に、数年に1度というアックア・アルタに遭遇しました。
その時の模様は日本のニュースでも流れたので覚えておられる方も多いと思います。
アックア・アルタは、大潮、低気圧、そしてアドリア海の東南から吹く強風が重なったときにおこるそうで、ベネツィアの海抜が1mに満たないのもその要因の一つです。
ベネツィアは、アドリア海の最深部の干潟に築かれた島のような都市で、島の集合体である為、町の中に無数の運河が走っています。
街の中には、自動車、バイクは入れず交通機関は運河を行き来するゴンドラや水上バス、水上タクシー(パトカー、消防車も船)と徒歩だけの異国情緒満点の都市なのは皆さんご存じのとおりです。
昨日の疲れで熟睡中、サイレンと教会の鐘が夢の中で鳴り響いた気がしました。(実際に鳴り響いていたようです)
いつもと違う何かを感じて目を覚ましましたが、まだ暗かったのでそのまま二度寝。明るくなったころに散歩に出ようとホテルを出ると、道の真ん中に高さ1mくらいの木の通路を組んでいるところでした。
小雨の上、風が強く気温も低く急に冬になったような朝でしたが、通勤の人たちは足早に職場に急いでいます。
よく見るとほとんどの人が長靴をはいています。
街角には黒人やアラブ系の人がビニール製の簡易長靴を販売しています。
ここでようやく、「もしかしてこれはベネツィア特有のアックア・アルタ?」と気付きました。
そう思って良く見ると、商店は入口に水が入らないように木やステンレスで蓋をしています。
蓋が使い古されてるのと作りが結構立派なのもあったのでいつも準備をしているのでしょう。
しばらくすると、どこからともなく 水がサーッと流れ込んできて、町中の排水口からゆっくりと水が噴きあがっているのがわかります。
押し寄せるというより湧いて出るという感じ。
瞬く間に道路が水で見えなくなり、あわてて路上で売っているビニールの簡易長靴を買って(恐ろしく高くて低品質!)できるだけ水深の浅い道路を探してサンマルコ広場に到着。
その頃には太陽が顔を出し、広場一面が水できらきらと光っていたのが印象的でした。
サンマルコの船着き場は海と陸の区別が全くつかず、かといって警察が出動しているでもなく、なんだか住民も観光客も水没を楽しんでいるような気さえしました。
それを証拠に、ひざ近くまで浸水したサンマルコ広場にはいつもと同じようにカフェのテーブルが並び、そこでカップルが足をバシャバシャさせながらコーヒーを飲んでいます。
ウエーターもズボンをまくりあげてサーブ。
笑いの出るような光景でした。
最近は地盤沈下の影響でアックア・アルタが頻発するようでしたが、かといってたいした抜本的対策を講じているようにも見えずそこは、さすがイタリア人!
ベニスを離れて数日後のニュースでさらにひどいアックア・アルタが起こりました。
なんとサンマルコ広場が1m30センチ以上水没したそうで、その時には水着で飛び込む猛者たちが多数続出したようです。
おそれいりました!