エスプレッソマシンの寿命を伸ばすために大事なお水の話

せっかく導入したエスプレッソマシン。当然トラブルなく永く使用したいと感じますよね。
しかしながら…ここは敢えて率直にお伝えしたいのですが、どうしても機械ですので、故障してしまうことはございます。
ただし極力故障しないようにケアをすることはできます。
エスプレッソマシン故障の代表的な原因が二つあり、それは…
- 使用するお水の管理不足
- お手入れの不足
です。本記事では前者の「使用するお水の管理不足」についてお伝えさせて頂けたらと思います。
エスプレッソマシンの持病 それは水垢トラブル
エスプレッソマシンに関わらず、高温のお水を扱う機器の持病とも言えるのが「水垢(スケール)トラブル」です。
電気ケトルの底の部分に白い膜のような汚れが付いているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
あの白い膜が「水垢」です。
この水垢はお水の加熱により析出したもので、主な成分はカルシウム / マグネシウムと言われています。
水垢トラブルを防ぐためには?
お水の中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量は全硬度という指標で表現されます。
いわゆるお水の硬度のことです。
全硬度の値が低いと軟水、高いと硬水ということになります。
原則としては、硬度が高ければ高いほど水垢汚れが発生しやすくなり、硬度が低ければ低いほど水垢汚れが発生しにくくなります。
つまり、水垢が付着するのを防ぎたいのであれば、硬度が低い水を使用するのが有効ということです。
結局のところエスプレッソマシンではどうすれば良い?
さてエスプレッソマシンの話に戻ります。
エスプレッソマシンはボイラーでお水を高温で沸かしますが、その際にどうしても水垢が発生します。
水垢の成分自体は元々水に含まれているものではありますが、この水垢がマシン内に極度に蓄積してしまいますと、
- 水路の詰まり
- ヒーターやポンプといった部品の損傷
- バルブの詰まり
- センサーの誤動作
といったことが起こり得ます。こちらは水垢が多く付着したヒーターの写真です。

マシン内部にこびりついたこういった水垢を綺麗にするには、オーバーホールによるクリーニングと部品交換が必要になります。
クエン酸で水垢汚れは落とすことができますが、オーバーホールせずにボイラーにクエン酸を含むお水を流して水垢を落とすことは弊社では推奨しておりません。多少なりともクエン酸を含むお水がマシン内に残存してしまうためです
これを防ぐためにはどうすればいいか。これはもうシンプルに
硬度が低い軟水のお水を使うようにする
です!
水垢の原因になる硬度成分がそもそも低いお水を使用することで、水垢の蓄積を大幅に遅らせることができます。
抽出杯数がかさむと、頻繁に硬度成分を含んだ新しいお水がマシンに供給されることになりますので、業務用では特に有効な対策です。
どうやって軟水を用意するか?
ではどうやって軟水を用意するのか?ですが、
- 軟水化機能を持った浄水器を用いて、水道水を軟水処理する
- 硬度が低いことがわかっているボトル売りのお水を使用する
のいずれかになります。
水道直結式のエスプレッソマシンでしたら、給水栓とエスプレッソマシンの間に浄軟水器を接続する。
タンク式の小型エスプレッソマシンでしたら、タンクに軟水処理をしたお水をセットする、もしくは軟水であることがわかっているペットボトルのお水をセットします。
なお、水道栓に接続する軟水機能を持った浄水器はほとんどが業務用です。
(家庭用のもので軟水機能を持ったものは現行機種で見たことがありません…)
弊社の取り扱いですと、
といった製品がございます。
ご家庭でも上記の浄水器を設置してももちろん良いのですが、なかなかハードルが高いのも事実…とはいえ毎度ペットボトルのお水をセットするのも大変です。
手軽なポット型の浄水器で軟水機能を持っている製品も出回っていますので、そういった製品を探すのも良いかと思います。
(とはいえ極一部です。多くの浄水器はむしろ「ミネラル成分を損ないません」ということをウリにしていることが多いようです。また大変申し訳ございませんが、弊社ではポット型の浄軟水器についてはお取り扱いがございません…)
浄軟水器を使用する場合での要注意点は、カートリッジを定期的に交換することです。
徐々に軟水化の効力が落ちてきて、ひどいとフィルターが詰まってしまうこともあるため、メーカー定めている交換頻度を取り扱い説明書にてご確認頂けましたらと思います。
なお全硬度のめやすですが、弊社では「全硬度:30mg/L程度」を推奨めやすとしております。
(低ければ低いほどスケール発生を軽減できますが、低すぎる数値をめやすにしてしまいますと現実的にご用意が難しくなってしまうため、この数値に設定しています)
最後に繰り返しで恐縮ですが、使用するお水に気を配っていただくことで、エスプレッソマシンのトラブルを抑止することが可能です。
ご参考になりましたら幸いです。
注1: 軟水を使用しても多少は硬度成分が含まれておりますので、スケール付着を100%防ぐことはできません。硬度が下がった分だけスケール付着をその分遅らせることができるというイメージです。軟水処理をしたとしてもスケール付着によるトラブルは保証しかねますこと予めご了承くださいませ
注2: 硬度が低い水を使用することでエスプレッソの味わいへの影響は多少発生します。私見ですが、若干マイルド寄りの味わいになるイメージです。
注3: 硬度を下げる以外に、「リン酸塩」をお水に混ぜることでも水垢の析出を抑止できると言われています。ただし弊社では根本対策になる硬度を下げるアプローチを推奨しております。
注4: そもそも硬度成分を持たない「純水 / RO水」を使用したらどうか?という疑問もあるかもしれません。しかしながら純水を使用すると水を検知するセンサーの非作動といったことが起こり得るため、こちらは非推奨です。