ナポリ伝統の味クイートコーヒー
少し前の日経流通新聞に、「今、日本でナポリブームが起こっている」という特集がありました。
そういえば、ナポリピッツァ専門店やナポリジェラテリアのオープンラッシュが起こっているようで、1、2年くらい前からそういったお店からのエスプレッソマシン引き合いが急増しています。
ということで今回は、弊社イチオシのエスプレッソコーヒー、ナポリのクイート社と取引することになった時のお話をいたします。
2010年春、弊社に日本のピッツェリア界の大物シェフT氏がご来店されたことからこの話が動き出します。
T氏は、ナポリのイスキア島にある有名ピッツァイオーロ(日本にも多くの弟子がおられます)の秘蔵っ子。
その実力からイタリア本店名の使用を許されて翌年に日本で開業されるとのことでその新店舗のエスプレッソマシン選びにご来店されました。
その時に、聞いたことのないナポリのコーヒー豆を持参され「これは修行しているナポリの本店で使用のコーヒー豆で、ナポリの食料品店にも常時は売っていない。
すごいクレマが出て本当においしいし、ロットによるブレも少ないので、来年開業の日本の店ではどうしてもこのコーヒー豆を使いたいが日本では入手不可能。大一電化社で輸入できないか?」
当時弊社は、エスプレッソ豆はF&Lというブランドで軽井沢の焙煎業者にオリジナルブレンドをお願いしていて、エスプレッソコーヒーだけでライトボディからフルボディまで9種類用意し、とても上品でおいしいと多くのお客様から好評をいただいていました(今も好評で販売しています)。
ここでさらに新ブランドを投入することは、社内でパイの奪い合いになる可能性があります。
それに今まで弊社は、海外から「食品の直輸入」をしたことがなかったこともあり、僕は即答を避けました。どちらかというと、消極的な反応だったように思います。
それから1、2か月経ちましたが、この話が頭から離れず、T氏手持ちのクイートを送っていただき再度じっくりと飲んでみました。
たしかにT氏の言うとおり、砂糖が浮くほどの驚くほど分厚いクレマ層ができ、この濃厚な味わいは他のコーヒーとは全然違う。
ストレートで飲むとかなりパンチの強い苦みがあるが、少しの砂糖をいれると劇的に味が変わりダークチョコのようにトロリとした味わいに変化する。
これは日本人のほとんどが今まで飲んだことがないエスプレッソだ。
この素晴らしくおいしいコーヒー豆を使いたいお店はきっと多いと思う。
でも。。。。弊社はコーヒー豆や食品関係の専門店ではないのでいきなり大量の発注ができるはずはなく、小ロットを日本に輸出してくれるとは思えないし、してくれたとしても少量の場合輸送コストが非常に高くつく。
そもそも食品を商社や代理店を通さず「直輸入」した経験がないので、リスクが見えない。
迷いましたが、このおいしさは是非とも日本のお客様に紹介したい。
必ず喜んでいただけると確信しました。
問題点が出たらその時点で解決したらいい、動く前に色々と考えても仕方ない。
いつものように走りながら考えよう。
早速クイート社に取引の打診をいたしました。
クイート社は、はるか日本からオファーが来たことに驚くと同時に自分たちが誇りにしているナポリのエスプレッソを日本人もおいしいと感じたことを素直に喜んでくれました。
クイート社は、1980年ころに数人のナポリの富裕層が出資し、伝統的なナポリコーヒーを守るために設立されました。
彼らは、そもそもビジネス目的でクイート社を設立したのではないので無理に販路を広げることはせず少量高品質生産にこだわり、自分たちが普段利用するナポリ市内のレストランに直接卸すのみでスーパーや食料品店経由では販売していません。
なぜならスーパーや食料品店での販売ルートは倉庫や店舗内でストックされ鮮度が落ち、味が落ちるためです。
そういう会社なのでクイートコーヒーはイタリア国内でもナポリ近郊のカフェやレストランでしか飲めません。
日本でのクイートのファンが増えることは光栄だが、ナポリと同じように鮮度を保つことが販売の条件といわれました。
通常、コーヒー豆は輸送コストを下げるために船便で大量に輸入し半年―1年かけて在庫を売り切ります。
ナポリでのクイートコーヒーと同じ美味しさを日本でも飲んでもらうためには、ナポリのレストランと同じ鮮度=焙煎して30日以内=で提供しなくてはなりません。
そこで、翌月分予約制の販売手法をとることにしました。
クイートコーヒーの定期購入を契約したカフェ、レストランから翌月分の予約を取り、必要最低限を飛行機便で輸入し、入荷後すぐに配送をする。
この方法をとると焙煎後約2週間で日本に到着し、すぐに国内配送が可能になります。
手間とコストは相当かかりますが、この方法だとナポリ市民が愛する伝統的なナポリエスプレッソと同じ物を日本のお客様に飲んでいただくことが可能になるのです。
幸い、弊社はエスプレッソマシンの輸入の為に月間数便の飛行機便を使っています。
これに一緒に積み込めば単独輸入よりはコスト減になり、少し利益を圧縮さえすれば販売価格を船便の他社とほとんど同じに提供できます。
イタリアでも希少な極上のエスプレッソコーヒー豆を使っていただくことで、弊社の販売する本式のエスプレッソマシンの良さがより際立つことにもなります。
エスプレッソマシンの販売時には必ずクイートコーヒーの紹介をしていることもあり、瞬く間に販売数量は当初の計画に達しました。
日本で販売を開始してもうすぐ約3年。
お陰様で多くの日本のお客様にクイートコーヒーのおいしさを知っていただき、そのファンとなっていただきました。
伝統の味を守ることを第1にクイート社は決して量産しませんし、弊社も安易に販路を広げません。クイートコーヒーは、これからも日本にはなくてはならないナポリブランドとして愛され続けることとおもいます。
*クイートコーヒーは、日本では弊社が独占販売をしています。